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硬貨や紙幣といった現金をそのままコンピュータ・ネットワーク上にのせることはできない。 そこで,現金(貨幣価値)の電子化は,ICカードやハードディスク等に貨幣価値を記録することであたかも現金のような役割を果たさせることによって行う。
しかし,従来の現金とは異なり,中央銀行が電子マネーを一元的に発行するのではなく,現金を見合いに民間の主体が現金(電子マネー)を発行できるというもので,いわばプリペイドカードであるが,電子マネーという場合にはテレフォンカード,オレンジカード等の既存のプリペイドカードよりも汎用性が高いものを指しており,偽造対策等のセキュリティ対策や発行主体の適格性要件がこれまでのプリペイドカードと比べるとはるかに強く求められている。 このように,電子決済手段には,クレジットカード等の仕組みを利用したインターネット上の決済サービスや電子マネーが含まれる。

商取引には,売買や決済以外にも企業間のさまざまな伝票処理があるが,電子商取引が円滑に進むためにはこれら一連の取引が人手を介さず電子的処理で「シームレスに(継ぎ目なく)」繋がっていることが望ましい。 そこで,企業間の見積もり,受発注,出荷指示,請求書に伴って飛び交う大量の伝票を電子化し,コンピュータ・ネットワークを介した取引データの交換(「電子データ交換(EDI:ElectronicDatalnterchange)」)を行うことで効率的で迅速な事務処理が行われるようになってきている。
さて,電子商取引を取引主体別にみてみると,現時点では企業間(BtoB:BusinesstoBusiness)の電子商取引は着実に進展している(2000年は22兆円)ものの,企業対消費者(BtoC:BusinesstoConsumer)の電子商取引の発展はまだこれから(2000年は8200億円)である。 ビジネスのプロどうしによるBtoB取引と比べると,十分なノウハウを持たない消費者が介在するBtoC取引では,取引の安全性を確保すべく必要な法規制を整える必要性が大きい。
電子化された取引には従来の対面取引や書面取引とは異なる新しい取引上の仕組みが多く含まれているが,従来の法制度は当事者どうしが向き合って取引する対面取引や紙幣や証書などの紙を用いたペーパー取引を前提に組み立てているため,コンピュータのネットワーク空間を使った電子取引のような非対面取引や書面を用いないペーパーレス取引を想定していない。 この結果,従来の法をそのまま電子取引に適用しようとすると法に抵触したり,法解釈上疑義が残る場合が出てくる。
そこで新たな法解釈をガイドラインとして示したり,既存の法を改正したり,新たに立法を行う必要性が生じる。 電子商取引の基本的な仕組みをみるため,その最も基本的な形態であるインターネット・ショッピングを例に電子取引の具体的な仕組みを説明しよう。
まず普通の本屋で本を買うケースを考えてみよう。 皆さんは大学の専門講義の分厚い参考書が必要になった場合,大学生協書籍部になければそのような本を売っていそうな大きな書店に行って何冊かの本を手にとって見比べ,値段や内容を比較しつつこれならよいと思う本を買うことが多いであろう。
その際,書店の門構えや雰囲気,店員の身なりや態度,本の品質が悪ければ別の本屋で買うかもしれないし,レジでは店員がおつりを誤魔化さないよう何気なくレシートと実際のおつりを照合するのが普通であろう。 この対面取引では,商品の品質や売り手の信用度が無意識のうちにさまざまな角度からしっかりチェックされているわけである。
次に,インターネット上の本屋で本を買うケースを考えよう。 参考書を売っていそうな本屋のサイトをインターネットで検索し,探しているテーマの本をピックアップする。
その後,適当な本を見つけ出し,クレジットカード番号を入力して決済する。 これは洋書などの場合では普通の書店で探す場合よりも格段に早く,コストも安い。

しかし,インターネット上で得られる情報は,本のタイトル名,著者,価格(場合によっては書評や要約も載る)くらいで,その本屋は本当に実在するか,その商品に落丁はないか,支払ったお金をネコババされ商品が届かないリスクはないか,クレジットカード情報が悪用されないか,といったことを確かめる情報が格段に減ってくる。 そこで,こうした情報不足を補う新たな手段として考え出されているのが暗号技術を用いた電子署名やSETなどの通信手順に関する標準規格である。
そこで以下,これらについて順次簡単に説明しよう。 通常の商取引は,紙にサイン(署名)をすれば本人が取引を行い,取引内容を確認したことの証明が得られるが,電子商取引では電子データに自分独自のデータを書き込んでも十分な証明にはなりにくい。
何故ならば,本人と偽って取引を行おうとする者にとって,本人の手書きの筆跡を完壁に真似ることは困難だけれども,電子データならば容易かつ完壁に複製できるからである。 そのため,署名を電子化(電子署名)する場合には,ネットワーク上で取引を行う相手方が本当に本人であるのか,取引内容は本当に正しいのかについて,信頼できる第三者(認証機関)に証明してもらう必要がある。
その結果,電子商取引では,通常の取引とは異なり,第三者である認証機関を介在させ,公開鍵暗号方式(説明は後述)と呼ばれる暗号技術を用いて取引を行うことが一般的である。 なお,電子署名は暗号技術を利用した個人認証手段を広く機能的に指し示すため,現在主に使われている公開鍵暗号方式にとどまらない。
すなわち,同一の機能を有する技術が将来開発された場合には,その普及を妨げないよう(「技術中立性」への配慮)こうした技術も電子署名に含まれるべきである。 後述する電子署名法の中でもこれらを含めて幅広く電子署名として認めているが,以下では説明を簡略化するため,公開鍵暗号方式に絞って説明する(なお,公開鍵暗号方式を使った電子署名を広義の電子署名とは区別して「デジタル署名」とする用語法もある)。
インターネット・ショッピングの場合,インターネット上の販売店が送信者となって受信者である消費者に情報を送信するケースと消費者が送信者となって受信者である販売店に情報を送信する場合とがあるが,インターネット上の取引は対面取引とは違って相手の人相を確認したり証明書を見せてもらうわけにはいかず,このままでは販売店や消費者の名を語る送信者が不正な情報を流して詐欺などを働く危険性をチェックできない。 そこで,情報が漏洩したり偽造されないように暗号化して送信するほか,相手方が本人になりすましていないか,データが改寅されていないか,相手方が不正行為をしたのにしらばつくれていないかをチェックする第三者機関として認証機関を置いている。
地方自治体は印鑑の「田中」という印影をみてどこの「田中」かを証明する印鑑証明業務を行っているが,認証機関が行う認証業務もこれと似ており,印鑑と同様に不特定多数の人に対して使われる電子署名について認証機関がどこの誰かを証明する本人確認を行うわけである。

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